ミヤのブログ

醤油飲みません

冷やし素麺作ったお(^o^)

僕はやれやれ、とパスタを茹でていた。
「パスタを茹でて」女がそう言ったからだ。
「パスタを茹でるのは実に簡単だ。まるでマカロニを茹でるようにね」鍋の中ではパスタが泳ぎまわっていて、魚の様に見える。

ふいに、こんな事を思った。
実はこの鍋の中にはパスタなんか入っていなくて、ピッツァ・ド・ミノ──近所のピザ屋のことだ──のクワトロ・フォルマッヂが入っていたならどうなっていただろう。
「やれやれ、パスタを茹でるのは退屈だ」独り言をぽつりと呟き、菜箸でパスタを追いかけ回す。

───どのくらいパスタを茹でていただろう。
退屈な時間はとてつもなく長く感じる。2時間くらい経過したのではないか、という錯覚さえ生じたが、実際は5分が経過していた。

「やれやれ」と僕は息を吐いた。
どうやらアルデンテとやらにするには7分がいいらしい。
ピザ屋の店主との会話を思い出す。
「二枚目は無料です」
「やれやれ、僕が二枚目だからってそこまでしてくれなくてもいい。あいにく、男には興味がないものでね」
「はあ」

そうして、キッチンタイマーが鳴り響き、意識が現実─Kitchen─に戻される。
鍋の中では純白のパスタが踊っていた。
"イ・ボーノ・イート"という名のパスタは珍しい色をしている。ボーノイート""美味しいを食べる""とは小洒落た名前だ。

「できた?」女が洗濯物を取り込み、戻ってくる。
「ああ、──確かに」と言葉を続ける
「僕にはそれを茹でる事が""できた""」
「はあ」

女はそれを皿に移し、氷をいれる。
ソースが入った小鉢と共にテーブルに出された。冷製パスタの完成だ。
「完璧なパスタなどといったものは存在しない。完璧な絶望がないようにね」
「はあ」

女は呆れたような顔をして、言葉を投げつける。
「それ素麺だからね?」

やれやれ、僕には到底理解ができなかった。ピザ屋の店主ならこう言うだろう。
「少々お時間頂きます」とね。


飽きた