ミヤのブログ

醤油飲みません

俺の脳内選択肢が、就職カツドウを全力で邪魔している

将来のことを考えた。
思えば将来の夢はたくさんあった。小学の頃はコックさん、中学の頃はサッカー選手、高校の頃は脚本家や映画監督。
そして今はトップアイドルを目指している。


「25までには自立して家を出て行け」
「そ、そんな…破門ですか…?」
「どちらかというと勘当だ」
ぽつりと交わした父との会話を思い出し、自称9歳の現役女子小学生美少女アイドルのミヤは途方に暮れていた。

「だって、だってミヤは9歳なんだけど…」
女子小学生は煙を吐きながら将来の事を考えてみる。やりたい事はあった。と同時に、自分のやりたい事ができる世の中ではないことも理解していた。否、理解するしかなかった。

正直自分は仕事ができる方だと思っていた。物覚えは早い方だし、仕事においてのコミュニケーション能力もある。まともな企業でまともな職に就いたことはないが、どの企業でも入ってしまえばそれなりの評価は得られるだろう自信はあった。

しかしそれは過信だったのだ。
仕事ができるのではなく、できる仕事をやっていたこと。仕事を転々とし、得られたものはあれど目に見える資格は何もないこと。
そしてそんな女子小学生を雇う企業はないということ。
それが現状であった。
「私には何もない…」
激島村卯月状態のミヤは、近所の公園で途方に暮れるしかなかった──


「本当に何もないのか……?本当にやりたい事は……好きなものは……」
自分の好きなことを思い出す。
文章を書くのが昔から好きだった。大学は文学部に入り、ゼミの教授に「君は文学部ができるね」などと文学部ができなさそうな褒め言葉を頂いた事もあった。
新古今和歌集を読み続け、一年で徒然なるままに中退した大学は今ではいい思い出だ。


「やっぱりやりたい事をやるしかねぇ。将来は今の積み重ね。ぞんざいな人生ともうお別れ。さんざん迷惑かけてすまねぇ。けど親にはいつもマジ感謝」
そう心の中で呟き、ミヤは歩きだした。


「父さん!」
勢い良く部屋に入る。その顔は自信に満ち溢れていた。
「どうした?」
父は無表情で返事をする。

「父さん……いや、プロデューサー!」

父は無表情だった。

「俺決めたよ…将来の事。やりたい事見つかった」
「そうか……」
父は変わらず無表情だったが、ミヤには心なしか笑っているように見えた。

「俺、トップアイドルになる!」

父は変わらず無表情だった。

「もういい!お前はもう破門だ!!」

ミヤは一呼吸おいて、したり顔でこう言った。

「勘当じゃなくて?」



〜True End〜